2024年5月3日
今年もサテライトイベントKG+の展示会場としてMOGANAでは上田佳奈さんの写真展を開催いたします。
2024.5.3-5.12 10:00-18:00
MOGANA 1階メディテーションルーム
本展のタイトル「それはいま現れようとしている」は、ロラン・バルトが写真の本質を「それは=かつて=あった」という言葉で表現したことに応える形でつけました。
写真は撮影の瞬間に被写体がカメラの前に存在していたことを証明する断片です。
しかし、写真そのものがぼやけていて、写っているものが明確に判別できない場合、見る者が写真の「現像」の続きを行うことになります。鑑賞者の記憶や心境、そして何を美しいと思うかなどが投影され、はっきりと見えない部分が補填されます。
Instagramでは投稿の読み込み中にぼやけたイメージがプレビューされます。
画面中央に円のマークが表示され、読み込みが完了するまでの少しの間、時代や場所といった紐付けがなされないニュートラルなイメージが浮遊し、私たちの想像力を掻き立てます。混雑した駅のホームや通信制限の際にこの現象に気づいてから、日々大量に投稿され流れていくイメージの幻影を捕まえ、プリントとして定着させる試みを始めました。
本展の「#illusion #幻影」作品では、Instagramから採集したロード中に現れるぼやけた画像を編集し、被写体と背景が溶け合うように抽象化したものをシルクスクリーンで鏡に印刷しました。網点をかけてプリントするとぼやけた像がドットに変換され、イメージはさらに曖昧になります。対象がはっきりと見えないからこそ見えてくるもの。何がいま現れようとしているか、ぜひ会場で体験ください。
兵庫県出身。ロンドン芸術大学Central Saint Martinsでファッションデザインを、大阪芸術大学附属大阪美術専門学校で版画を学ぶ。日々の些細な出来事や痕跡を採集し、版画、写真、映像などを用いて「うつし取る」ことで、日常を新たな視点で再解釈する作品を制作している。